小説つづき
「ただいま〜」
誰もいない暗闇に虚空する。
(姉ちゃんはまだ帰って来てないか……)
僕は部屋の明かりをつけて、机の上に置かれていたメモに気づく。
【今夜は帰りません。勝手に食べてね】
(夜勤か。大変だな。)
メモを確認すると玄関に行き、鍵を掛けて明かりを消した。
リビングのテレビをつけて適当にチャンネルを回す、と言ってももっぱらNHKかNHKBSだ。他のチャンネルは明るすぎて見る気にならない。家に一人でいると虚しくなるので見たい番組がやってなくともテレビをつけるようにしている。
冷蔵庫から冷凍の焼きそばを出して電子レンジを開けて温める、と、ふと思った。
(あ、かつお節ってあったっけ…?)
冷蔵庫を再び開けると、調味料がしまっている入れ物を探すが、
「あ~、切らしてるよー。」
かつお節がなくとも焼きそばは食べれる。だが僕は焼きそばのトッピングには青のりとかつお節と決まっている。
「買いに行くか…。」
幸い僕の住んでいるアパートから自転車で5分ほど近くにコンビニがある。多分かつお節も売っているはずだ。
夜は冷えるから厚手のジャンパーを羽織って再び玄関に向かう。玄関を開けて外に出た。
「う~寒っ!」
まだ秋とはいえ気温はほとんど冬だ。
「自転車乗るなら手袋してった方が良かったな…」
(まぁ5分だし大丈夫だろ)
自転車置き場にあるママチャリに跨って颯爽と漕ぎ出す。
「やっぱり夜はいいよなぁ。」
自転車を漕ぎながらそんなことを口走った。
周囲に誰もいないから独り言を言っても不審がられない。
「夜はいいよ。暗いし静かだし人はいないし。」
僕は夜の方が気分的に向上する。朝が1番苦手だったりする。あの明るさがなぁ…。
そんなことを考えていたらあっという間にコンビニに着いた。
自転車を置き自動ドアをくぐる。
意味もなく雑誌コーナーに目をやる。そしてそのまま飲み物のコーナーへ。特に行動に意味は無いがなんとなくコンビニに来たって感じがするから毎回同じ行動をとる。
アイスのコーナーを見ておにぎりコーナーに行く。
「焼きそばだけじゃ寂しいからおにぎりも買おっかな~」
そうしていると、後ろの方で女性2人組の声が聞こえた。なんとく聞いたことのある声が。
「あたしおでん買いたいな〜、やっぱコンビニおでんは鉄板でしょ」
「そだね~、マミはコンビニ来ると毎回同じこと言ってるよ~(笑)」
「うそ!?あたし夏はガリガリ君って言ってるような気がするけど(笑)」
「マミはガリガリ君好きだもんね、冬に食べるアイスは夏より美味しいって言ってたもんね(笑)」
「いやぁ冬のアイスはご褒美ですよ~(笑)」
「って、あれ?ハズキくんだ、やっほー」
「あ、こんにちは……」
アカネさんとその友達の、確か、マミさん、だったような…。
「今は夜だからこんばんは、だよ~(笑)」
訂正された。
「あ、こんば…」
「ハズキくんこんな時間に夜遊び?」
被せられた。
「いや、夕食のかつお節を買いに…」
「え~夕食がかつお節なんて面白いね〜(笑)」
んなわけあるかっ。
「あっハズキくんもしかして夕食はお好み焼きかな?」
マミさんが言う。
「いや、今日は焼きそばで…」
ゼミが違うのに僕の名前を覚えてるなんて良い人だっマミさん。
「そうなんだ!あたしらバイトの帰りでさ、お腹減ったからコンビニに寄ったんだ。」
アカネさん達は夜遊びじゃなかったんだ。こんな遅くまでバイトなんて偉いな。
「僕はアパートが近くで、かつお節切らしてたからちょっと買いに」
「かつお節美味しいよね~、わたしあれの踊るの好きだな(^-^)」
「アカネは美味しいと大抵食べながら踊ってるじゃん」
「感謝の踊りだよ〜、美味しさによってパターンが違うのだ。」
アカネさんは不思議系キャラだな…。
「じゃあ僕かつお節買うから…」
「あっ、引き止めちゃってゴメンね!ほらアカネが意味不なこと言ってるからハズキくん気まずいって」
「意味不じゃないよ、全ての行動には理由がある!」
「はいはい、ハズキくんじゃね!」
「ハズキくんまた学校でねーばいばい」
「うんじゃまた…」
そう言って僕は調味料コーナーに向かった。
が、しかし重大な事に気づいた。財布持ってくるの忘れたー。
「どーしよ…。」
普通に考えて家に帰って財布を取りに行く、けど、運が悪いことにかつお節が残りワンパックしかないのだ。
「もし帰ってかつお節が買われてたらやだな…」
うーむ、とかつお節の前でしばらく立っていると、
「ハズキくん何してんの〜?かつお節とにらめっこ?」