夏の思い出
壊れかけの扇風機を引っ張り出してスイッチを入れる。悲鳴をあげて回る小さな風車。
スイカの種を飛ばし合ったあの日。
どっちが遠くに飛ぶか競争しよう。君は負けて悔しそうなのにどこか楽しそうで。
夜、大きく咲いた一輪の花はとてもキレイで手で触れようとすると火傷してしまいそうなほど輝いてた。
君は地上に映し出す小さな星がいくつもポツリと落ちていく様子を眺めながら、儚いけど一瞬を一生懸命生きてる感じがするね、と言ったね。
外はセミたちの大合唱。セミたちも一瞬を一生懸命生きている、そんな感じがした。
ふわふわの氷山を崩しながら食べる。僕らはいつも同じ味。色のついたカラフルなやつは眺めるだけ。
僕が君に買ってあげたアイス。食べ終わった後、駄菓子屋のおばあちゃんに、おめでとうって言われたけど、君はなぜか大事そうにポケットに仕舞ったね。今も持っているかな。