どうなつの陽はまた昇る

リアルではボッチのコミュ障が綴る日記

小説つづき②

「へ?」

僕は間抜けな声を出した。

どうしてこんなに声を掛けてくれるんだろうと、そう思った。

「いや…かつお節買おうと思ったけど、ここに来て金欠…あはは…」

僕は財布を忘れた、というのを精一杯の僕なりのジョークで金欠、と表現した。

「えー!それは悲しいね〜( ´∵`)。あ、そうだ」

アカネさんはそう言うとおもむろにカバンから財布を取り出した。

「いくら?」

「えっ?」

僕は言葉の意味を理解出来なかった。どんまいだね、そう言われることを予想していたからだ。

「120円かぁ~」

120円、そのくらいのお金を今の自分は持ち合わせていないことに落胆しつつ、

「あとワンパックで売り切れで…」

と、僕は言った。

「ハズキくん、お姉さんが出してあげようか?」

アカネさんはいたずらっぽい笑みを浮かべて冗談っぽく僕に問いかけた。

「え…そんな、悪いし…」

「大丈夫!お姉さんに任せなさい!」

「いやいや、ホントに、ダメだよ」

僕は引き下がらない。何故か。お金が絡むことは絶対安易な返答はしてはならない。例えそれが空気読めよ的なことであっても、だ。

「どしたの?」

マミさんが話に加わってきた。

「あ〜、なるほど。アカネがハズキくんのかつお節を横取りしようと。」

「違いま、…ん?」

アカネさんは言いかけてなにかに気づいたようだ。

「そう!わたしかつお節欲しかったからこれ貰っちゃうね!」

マジか…。

そう言ってレジにかつお節を持っていった。

ぽかーんとする僕。そしてあえて引き止めないマミさん。

「…アカネはさ、ハズキくんに気を使わせたくなかったんだよ。」

そっとマミさんは僕に耳打ちした。

意味が分からない僕。

会計を済ませたアカネさんとマミさん、と何故か僕はコンビニから出た。

そして、

「はい!」

と笑顔でかつお節を僕に差し出すアカネさん。

「え?」

「わたしかつお節買ったはいいけど今お家に余りすぎてたの忘れてた!だから、わたしを助けると思ってこれ貰って!」

下手な嘘をついているのは分かったけど、ここで貰わないと今度はこっちが悪くなる。

「あ、ありがとう、ございます…」

だったら、だったら尚更聞かねばならない。

「…なんで…なんで、そんなに僕を構ってくれるの?」

アカネさんとマミさんは顔を見合わせてからこう言った。

「あたしは、ハズキくんともっと話す機会が増えれば良いなって、そのきっかけ作りってやつ?」

「わたしはね~、かつお節を見る度ハズキくんのことを思い出すことが出来るから、なんてね〜(笑)」

2人はそう言って笑いあった。

自然と僕も笑っていた。